胃潰瘍の再発予防にピロリ菌の除菌は?

Q:胃潰瘍の再発予防にピロリ菌の除菌を勧められています。 (75歳/女性)

数年前から胃潰瘍になり、制酸剤や十二指腸の粘膜を保護する薬も飲んでいるのですが、治ったり、再発したりの繰り返しです。再発すると、空腹時にみぞおちが痛くなります。ひどいときは歩いているときの振動ですら響いて、外出もおっくうになるほどです。

病院で検査したところ、ヘリコバクター・ピロリ菌が原因と言われました。ピロリ菌の除菌は再発予防に効果があるということで、これまでに2回除菌を行いました。しかしいわれるほどの効果はなく、結局、再発しました。

私の場合、使用した抗生物質が効かないピロリ菌に感染している可能性があり、そのために再発するらしいのです。消化器科の先生は、「次回は抗生物質の種類を変えて、やってみましょう」と、3回目の除菌を強く勧めてくださいます。3度目の正直で再発が防げるのかどうか、またやる価値があるのかどうか、これまでのことを考えると迷ってしまいます。


A:除菌より先にやるべきことがあります。

近年、胃潰瘍の元凶として、「ヘリコバクター・ピロリ菌」がやり玉にあがっています。ヘリコバクター・ピロリ菌は特別な菌ではなく、60歳以上の人の8割以上が胃の中に持っている常在菌です。

では、60代の人の8割以上が胃潰瘍になっているかといえば、そんなことはありません。つまり、胃潰瘍の原因を、この菌にすべて負わせることには無理があるということです。

ヘリコバクター・ピロリ菌だけが悪いのではない

ヘリコバクター・ピロリ菌が胃潰瘍の形成に関与するとすれば、ストレスがかかったときです。通常の胃はpH1~2ぐらいの強酸性を保っています。ヘリコバクター・ピロリ菌は酸に弱く、この条件下で増殖できません。潰瘍を作るほどに菌が増えるのは、胃のpHが強酸性を維持できなくなったときです。

この条件が作られるのは、ストレスがかかったときと、H2ブロッカーなどに代表される制酸剤を服用した場合です。

ストレスがかかると副交感神経の働きが抑えられ、細胞の分泌能が低下して胃酸の分泌が抑えられ、胃は強酸性を維持できなくなります。加えて、H2ブロッカーで胃酸を抑えることで、強酸性が保てなくなった胃粘膜は、ピロリ菌にとって棲み心地満点となって増殖します。

ストレスは交感神経を緊張させて顆粒球を増やします。顆粒球は常在菌と反応する性質があり、増殖したヘリコバクター・ピロリ菌と反応して大量の活性酸素を放出し、組織を破壊します。ストレスが長引くことで、潰瘍が形成されます。ヘリコバクター・ピロリ菌が悪玉というより、ストレスや薬で菌が暴れやすい環境が作られることに問題があるのです。

胃潰瘍の治療では、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が必須という流れができつつあります。除菌すれば顆粒球が反応する相手がいなくなるため、潰瘍はできなくなります。こうして、胃潰瘍が治っても、ストレスを抱えたままなら再発は必至です。

あなたは3回目の除菌を迷っていらっしゃいますが、優先すべきは制酸剤をやめることと、ストレスチェックを行うことです。制酸剤以外で、ひざ痛や腰痛用に痛み止めを使っていたら、それらの服用もやめましょう。ふだんの生活で心配事はありませんか? お孫さんの世話などで、体に無理をかけてはいないでしょうか? 生活を点検して、心身に負担がかかっていないかどうか見直してみましょう。薬とストレスを取り除くことで除菌は不要になるでしょう。

(医学博士、安保徹先生のオフィシャルサイト、Q&Aから転載