健康診断や人間ドックは必要?

~健康診断や人間ドックは病人をつくりだすメカニズム~

健康診断や人間ドックは、自分が健康なのかどうかチェックするためにおこなわれていると思っている人が大半ではないでしょうか。

しかし、それは間違いです。

現状の健康診断や人間ドックは、一般企業の販売店が見込み客を増やそうとするのと同様に、病院が患者さんを増やそうとするシステムを化しているのです。

一般の企業の場合、見込み客というのは「この商品を買ってみようか」という気持ちがありそうな人のことをいいますが、医療の世界では、患者さんの気持ちとは関係なく、医師が「病人」をつくることができます。

健康診断や人間ドックで受ける検査の基準値が厳しすぎると、本当は健康な人が“病人”にされてしまいます。

日本の基準値が、かなり以前から「欧米にくらべて厳しすぎる」との指摘がありました。

それは病人を増やしたい医師や医療機関にとって、また、クスリを売りたい薬剤師や製薬会社にとっても「都合がいい」ことになります。

たとえば、血圧を例にすると、2014年に日本人間ドック学会が発表した新基準値は「上が147(mmHg)まで、下が94(mmHg)まで(以下、検査数値の単位は、基本的に初出に表示し、以降は数値だけで表記します)」ならば正常だとしていますが、それまでの基準値として「上が130以上、下が85以上」なら高血圧とされてきました。

新基準なら血圧が147を超えなければ「セーフ」ですが、これまでは130を0超えると高血圧だとされてきたわけです。ある試算によると、これまで高血圧だとされてきた2460万人が、新基準値では660万人に減ります。したがって、本当は高血圧ではない人が1800万人も“病人”とされていたわけです。

これと同じようなことが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の基準値についてもおこなわれています。

LDLコレステロールの場合も、基準値を超えると「異常」とされて、治療に対象にされてきました。LDLコレステロールの検査数値が基準値よりも高いと、医師から脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすいと脅かされます。

医師からそう言われれば、だれもが心配になります。このようrに、基準値を厳しく設定することによって、病人を増やし続けてきたのです。

日本人間ドック学会が発表した新基準は、欧米などの基準値とも合致した妥当なものでしたが、医学界からは「緩すぎるので安心できる基準値でない」とか「病気予備軍の早期発見ができにくくなる」などといった猛反発がありました。当時、その賛否両論をとりあげて新聞や週刊誌が報道合戦を繰り広げていたものです。

しかし、基準値をめぐる論争は、いつのまにかうやむやにされ、報道はトーンダウンしてしまいました。

その結果、いまだに厳しすぎる基準値で“病人”を増やすことで利益を得るという構図のまま続いています。こうしたことを考えると、健康診断や人間ドックは“病人”をつくりだして医師、薬剤師、さらには医療機関や製薬会社などの利益に貢献するためにおこなわれているもののようです。

医師と病院は患者さんを増やし、薬剤医師と製薬会社はクスリを売っています。

自分たちの都合で勝手に医学的根拠のない基準値を設定し、病人を増やしたり、クスリを売ったりする医師や薬剤師に倫理感を問いたい思います。

健康診断や人間ドックで使われている基準値には医学的根拠がない証拠として、日本では90歳の高齢者も20歳の若者も、すべての基準値がひとつしかないことがあげられます。

世界のどの国でも、基準値は年齢によってきちんと区別して設定されています。

もう一度いいますが、医師は厳しすぎる基準値を武器にして健康な人を“病人”にしています。

もちろん「自分が健康かどうか?」ということは、だれもが知りたいものです。

では、わたしたち日本人は健康診断や人間ドックとどのようにつきあったらよいのでしょうか?

いまの健康診断や人間ドックの基準値に医学的根拠がないのなら、どうしたらいいのか、この本のなかで最終的かつ決定的な結論を提示することにしましょう。

医学博士 中原英臣
医学博士 矢島新子

(出典:検診・人間ドックはもうやめなさい! 中原英臣著・矢島新子著)

海外に席を置かれていたお二人の医師が、日本医療を客観視し、日本医療の在り方が奇妙に映ったのだと思います。不自然さが多いあまり、ほんとうの、『医療の掛かり方』を伝えるべく、執筆に至ったということかもしれません。





■中原英臣(なかはら ひでおみ)
医学博士。1945年東京生まれ。東京慈恵医大卒。米セントルイスのワシントン大学でバイオ研究に取り組む。専門は遺伝子研究。2011年に中咽頭がんになり、5年間で2度の転移を経験するも克服。山野医療専門学校副校長、新渡戸文化短期大学名誉学長を務めるかたわら、元気で執筆やコメンテーターなど幅広く活躍中。著書に『テレビじゃ言えない健康話のウソ』『知らないと損する遺伝子のヒミツ』ほか多数。

■矢島新子(やじま しんこ)
医学博士。東京生まれ。東京医科歯科大卒。パリ第一大学ソルボンヌ大学院医療経済学修士。WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、川崎市保健所勤務などを経て独立。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。現在まで20社以上の企業の産業医を務める。著書に『医者が増えると、病気が増える?』(共著)ほか。