TPPで給食がこのように変わっていく予想が、吉富信長氏のブログでわかりやすくまとまっています。
内容を引用いたします。
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2014年10月現在、TPPについての日米事務協議が最終決着に向け加速されています。政府間はなんとか年内合意にめどをつけたいようです。
TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定のことで、簡単に言えば、
関税の撤廃や国家間でのルールや仕組みの統一化をはかるものです。国境を越えて、あらゆる物が自由に出入りし、食品・医療・雇用・サービスなどのルールや仕組みを統一しようといものです。
全体的な国益や経済戦略を考えると、一見、何だか便利で良さそううに思えそうですが、実はさまざまな問題や懸念をかかえています。TPPはこれまでのFTA(自由貿易協定)などと違い、できるだけ例外は無しにしようとする非常に高いレベルの自由化をめざしています。
TPPといえば、政府やマスメディアでは「関税撤廃」の話題ばかりですが、なにより米国が執念を抱いているのが「
ISD条項」というものなのです。ISD条項とは、
外国の企業(や投資家ビジネス)の障壁となっている制度に対し損害の賠償を求めて、相手国を訴えることのできる条項のことをいいます。つまり、自由貿易協定を結んだ以上、政府間の交渉無しに、企業独自で日本政府を「不当な競争を強いている」と訴えることができる条項なわけです。
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ISD条項により、具体的に起こりうる例を食に限らずいくつか挙げてみましょう。
◎学校給食に地元食材が使われなくなり、遺伝子組み換え食品が流入
自治体による地産地消の奨励として振興される学校給食の地元志向も
ISD条項では、海外企業から入札不公平として訴えられてもおかしくありません。学校給食の食材は、全て安いコストの輸入食材に取って代わってしまいます。
TPPのある種モデルともいえる米韓FTAにおいて、アメリカ企業に訴えられないよう、韓国はさまざま法令の修正をな余儀なくされました。そんな中、韓国のソウル市が以下のような発表をしています。
「
遺伝子組み換え食品の使用を禁止するという条例(「親環無償給食等支援に関する条例」)
が、米韓FTAの「貿易に対する技術障壁」に違反し紛争に発展する恐れがある。」
つまり、
学校給食などで、遺伝子組み換え食品が使用されることが拒否できなくなるということです。また、科学的に危険性や被害があったことを証明し、アメリカを納得させることができなければ、完全に違反になります。
よって、この条例も、仕方なく撤廃される可能性が出てくるわけです。また、韓国は年間約784万tの遺伝子組み換え作物をアメリカから輸入しているそうですが、アメリカが安全と言えば韓国でチェックすることをせずに輸入するというルールがFTAに盛り込まれているようです。
※米国は、TPPにおける遺伝子組み換え食品の表示義務化については、2013年6月に容認しました。TPP交渉全体の進展を重視し妥協を受け入れた格好のようです。
※貿易に対する技術障壁
外国からの輸入品に対して、(障壁となる基準や規制を排除し)国内製品と同じ扱いをしなければならない制度。
◎危険な農薬使用の禁止はできなくなる
事実、NAFTA(北米自由貿易協定)において、米国農薬メーカーは、カナダ政府が人体に危険な農業用殺虫剤リンデンの使用を禁止したことに対し提訴しています。
◎環境汚染の規制ができなくなる
産業廃棄物の処理を行なう海外企業が日本市場参入するにあたり、日本政府から環境が汚染されるとして廃棄物処理の認可を取り消されても、提訴することができます。
◎国民健康保険制度の撤廃
米国の大手保険会社が、日本の国民健康保険を障壁制度であると指摘した場合、訴えられる可能性があります。よって、国民健康保険はなくなり、日本の医療制度は崩壊するかもしれません。
◎農協(JA)の金融部門が解体される
莫大な農協マネーを本腰で狙っているでしょう。金融部門には、信用事業と共済事業があり、農協マネーはグローバル金融市場へ駆け巡っているのに、農協のみグローバリゼーションを否定する閉鎖的な世界であるのは納得できないというのが米国の率直な意見です。
◎原発推進
事実、ドイツは脱原発をしようとしましたがスウェーデンの企業にEU版ISD条項で訴えられ、約9000億円の損害賠償を求められています。現在、日本で原発を作ることができるのは、日立・東芝・三菱重工の3社です。日立は、アメリカのGE社と戦略的提携を結んでおり、仮に日本で脱原発方針になったら、GE社が日本国に対し当初の想定利益分の損害賠償を訴えてくるかもしません。TPP加盟では、脱原発はかなり難しいことになってくるでしょう。
◎水道をはじめとする公営機関が民営化される
公共・公営事業はすべて解放される。水道まで他国に支配されるはめに。
◎自治体や国の法律が変わる
ISD条項や「貿易に対する技術障壁」による訴訟対策のため、まずは自治体の法律から変えなければならなくなる。
◎日本の司法制度が崩壊する
現状では、外国の弁護士が日本で活動することができないが、TPP締結後「貿易に対する技術障壁」をたてに活動できるようになり、日本の裁判は外国弁護士の独断場と化す。
◎米国のサービス業は日本に事務所を構えず税金を払わなくてもよい
サービス業は投資先の国に事務所を構えなくても営業できる。つまり、会社がないので、税金を徴収できない。
◎米国による水源地山林地帯の買収が加速する
外国人投資家の土地購入が容易になる。
◎BSE牛が輸入される
米韓FTAにおいて、BSE牛が発覚しても、輸入禁止の措置に韓国は至れなかった。
※ちなみに、ISD条項での訴訟機関である「投資紛争解決国際センター」は、(米国が総裁を務めることの多い)世界銀行の傘下であり、米国に有利なのは誰がみてもわかります。
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ノーベル経済学賞のスティグリッツ教授は「
TPPは、多国籍巨大企業の、1%の1%による1%のための協定である」と言っています。
「TPPは、米国企業の利益を守ろうとするもので、日米のそれぞれの国民の利益には全くならない。」とも指摘しています。 TPPは、交渉内容非公開のいわゆる秘密交渉で、米国でも通商代表部と600社の企業顧問に限られ、米国の国会議員もアクセスが困難です。
一方日本は、交渉情報は政府が独占し、与党の重鎮だけが密かに知る立場にあります。
※モンサント、デュポン、シンジェンタなどのバイオテクノロジー企業や農薬業界のロビイストは、米国政府のチーフ農業交渉として働いています。
各国の提案文書や交渉で決定した内容も、TPP協定発効後4年間は隠されます。政府がいくら口だけ「これだけは守る」などと言っても、公開された時には手遅れとなりかねません。こうした中、最近になって、米国連邦議会がTPPの草案文面を見ることが許され、少しずつリークされています。
米国市民団体『パブリック・シチズン』のロリ・ウォラック女史は、 「政府やマスメディアでは、TPPについては貿易の話題ばかりを強調していますが、実際TPPの真の狙いは貿易ではないのです。TPP協定には29章ありますが、そのうち5章しか貿易に関連しおらず、残り24章は各国政府を束縛したり、食品の安全、環境基準、金融規制、エネルギーや環境政策を制限したり、あるいは大企業の新たな権力を確立したりするものです。」と言っています。
TPPがスタートすると、加速されていくだけで、誰にも止めることはできなくなるのです。